北京留学あれこれ日記

~旅好き女子が中国に留学してみた話と帰国後のこと~

中国の壮絶な大学入試「高考」について、中国人学生に聞いてみた。

こんにちは、ハルです。

 

 

中国では、毎年6月初旬に全国一斉に行われる大学入試があります。

普通高等学校招生全国统一考试、通称「高考(ガオカオ)」と呼ばれる試験で、毎年6月7日と8日の2日間に渡って行われます。

2020年はコロナウイルス流行の影響で1ヶ月延期となり、7月7日から行われるようです。

 

日本のセンター試験に当たるものですが、中国の高考の方が圧倒的にプレッシャーが大きいと思います。

 

 

受験者数

2019年、日本のセンター試験の受験者は58万人程でした。

しかし中国の高考の受験者数は約1031万人。規模が違う…。

 

日本に比べ、受験者数に対しての大学の定員が少ないのも中国の受験戦争が激化している原因の一つです。

 

 

 

 

国家重点大学

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中国には1300程の大学がありますが、そのほとんどが国公立大学です。

その中でも「国家重点大学」と定められた大学は、政府が優先的に支援するとしています。

 

しかし、国家重点大学はたったの88大学。

940万人が、この88大学を目指して勉強するのです。

 

「国家重点大学」と「非国家重点大学」では天と地ほどの差があり、就職やその後の人生を大きく左右するのです。

国家重点大学を卒業した、ということは一生の財産になります。

 

もともと科挙のお国柄なので、「勉強ができることが一番」という考え方が未だに残っています。

 

 

 

 

一発勝負

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中国には日本のような大学個別の入試はほぼ無く、本当に高考だけの一発勝負です。

 

 

受験生は、朝から晩まで勉強します。日本の一般的な受験のイメージより、遥かに壮絶です。

「勉強し過ぎて死ぬことはないから、死ぬほど勉強しよう」というスローガンがあるほど。

 

食事や睡眠の時間まで削ったり、勉強時間を確保するために親が学校の近くにアパートを借りるのも珍しくないと言うのだから驚きです。

 

 

受験生でなくても、中国の子供は小学校、中学校から勉強漬けの日々です。日本の部活のようなものはなく、恋愛も禁止。全ては高校3年の6月に向けての準備。

それを考えると、高考のプレッシャーは半端ではないでしょう。

 

正直、中国人から中国の子供の勉強について聞くたびに「日本に生まれてよかった…」と思ってしまいます。

 

 

 

 

合格難易度に地域差がある

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(図:百度百科 高考难度排行榜より)

 

中国の大学入試は、各省(地域)ごとに定員が決められています。地元の学生の定員が多いのが普通です。

 

そのため、例えば北京の大学は北京に住んでいる学生の方が受かりやすいのです。地元の学生は優遇され、定員が多いだけでなく、合格ラインも下げられます。

 

つまり、地方から北京の大学に入るには、「少ない定員・高い合格ライン」というダブルで不利な条件となるのです。

省ごとに定員が決められており、江蘇省、河南省、浙江省などは特に激戦区と言われています。

北京の大学に留学して、これらの地域出身の学生に出会ったら、他の学生より難易度の高い入試を潜り抜けてきたということです。

 

逆に、内陸の青海省や新疆などでは、教育水準が低かったり貧困地域であることが考慮され、合格ラインが引き下げられます。

 

 

 

 

少数民族は優遇される

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中国には56の民族があり、大部分を占める漢族と55の少数民族で構成されます。

 

大学入試では、少数民族の学生は優遇されます。

 

私の友達の中には満州族、ウイグル族の子がいますが、入試の際合格ラインが下げられる(加点されるんだっけ?)ので、漢族よりも合格しやすいと言っていました。

 

ちなみに、都市部に住む少数民族の中には「形だけの少数民族」もいて、戸籍上は少数民族だけどその他は漢族と何も変わらない、という人が多いです。

満州族の友達がそれでした。両親共に満州族だけど、北京育ちで何不自由なく暮らしてきたそうです。

 

社会生活で不利を被りがちな少数民族を優遇する制度なのでしょうが、実際良いのかよく分かりません。

 

 

 

 

中国人に聞いてみた

受験激戦区で有名な浙江省出身の友達に、中国の高校生活と高考について聞いてみました。

 

 

文理選択

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日本と同じで、高校2年の時に文系・理系の選択をします。

大学の定員が多いことから、理系を選ぶ人が多いそう。彼女も外国語大学で日本語を勉強してますが、高校では理系だったそうです。こういう人は周りに結構います。

 

数学が嫌いだけど、理系の方が進学の幅が広がるから理系にしたと言っていました。

(「高校で理系→文系の大学」はできますが、高校で文系を選択したら文系の大学しか行けません。)

 

 

高校3年生は特に大変!

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高校1年からたくさん勉強しますが、やはり受験前最後の1年はすごく大変そう。

 

朝6時半から、夜12時まで勉強、勉強勉強

1週間のうち週末の午後数時間だけ休んでいたそうですが、あとはひたすら勉強です。

気がおかしくなりそう…。

 

ちなみに、高校1、2年生は土日は休むものの、平日はこんな感じらしいです。

 

 

高校では、黒板に

「高考まであと◯日!」

みたいなカウントダウンが書かれ、校長が

「勉強しろー!」と毎日言いに来るとか。

 

生徒の高考の成績は学校の評判や先生個人の評価に繋がるので、先生たちも必死です。

 

 

親も必死

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子供の人生を決める高考は、親も必死です。

 

勉強のために学校の近くにアパートを借りたり、車で送り迎えしたり(子供は移動中も車内で勉強する)。

 

 

 

高考当日となると、チャイナドレスを着て激励する母親もいるとか。

 

チャイナドレスは中国語で「旗袍(チーパオ)」と言います。中国の成語「旗开得胜(軍旗を揚げた途端に勝利を収める)」「旗」の字が同じであることから、チャイナドレスを着て合格のゲン担ぎをするんだそうです。

 

 

「状元」と呼ばれる首席

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各省で高考の成績が一番優秀な学生は「状元」と呼ばれます。

文系・理系のそれぞれ1位が「状元」となります。

 

学校から表彰されたり、メディアからインタビューを受けたり、一躍時の人となるそう。

 

時には数十万元にもなる奨学金を得られるそうです。

 

 

 

 

社会全体で受験生を応援

高考は、国の一大イベントとも言えます。

当日は受験生を優先してバスを運行したり、試験会場付近の騒音や工事が禁止されたりします。

 

ネットやSNSでも受験生を応援するメッセージが多く見られました。

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百度(中国の検索エンジン)でも、高考までのカウントダウンをしています。

 

 

 

 

海外留学という選択

 最近では国内の競争が激しいため、海外の大学へ留学する人も増えています。

海外留学と言っても、大きく2パターンあるようです。

最初から海外の大学を目指す

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こんなに大変な中国で子供を勉強させたくないと考える親も多く、富裕層では高校を卒業した子供を海外に進学させるパターンが増えています。

 

中国国内の大学よりのびのびと過ごせ、留学経験は帰国後有利になるからです。 

 

 

 

受験に失敗して留学を決める

もともとは中国国内の大学を目指していたが、受験に失敗して海外留学に切り替える人もいます。

 

日本のゲストハウスでアルバイトをしていた時、アメリカの大学に在籍していて、夏休みを利用して旅行している中国人学生に会いました。

彼は受験に失敗し、親の勧めで留学を決めたそう。

 

 

また、このタイプの留学では日本留学も人気です。

 

「欧米への留学は莫大な費用がかかるけど、日本なら近いし比較的安い。中国で日本語の需要も高まりつつある。」

 

こんな理由から、日本留学は

・もともと国内進学を目指していたけど失敗

・最初から欧米留学するのは厳しい

という中間富裕層に多いようです。

私の日本の大学の中国人の先輩が、まさにこのパターンでした。

 

 

 

 

まとめ

壮絶な中国の大学入試。

まさに現代の科挙と言ってもいいでしょう。

 

留学先で仲良くしている中国人の友達も、みんなこの高考を乗り越えてきたと思うと尊敬せずにはいられません。

 

 

今年も決戦の時が迫っています。

加油!がんばれー!